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​​理事長 ご挨拶

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​特定非営利活動法人コミュネット楽創

理事長 山本 創

   約20年前、利用者の声を大切にした居場所をつくろうというナイーブかつ熱い思いから私たちの活動は始まりました。その思いは、この間の社会の変化、私たち自身の学び、何よりも利用者を始めとした様々な方との出会いの中で鍛えられ、深化してきました。今は、人それぞれが『働く』ということを通して、どのように自分の人生を生きたいのかについて共に考え、そのために必要な支援を提供していくということを核に、様々な活動を行っています。
 今後も事業の運営や支援の方法論は改新し、また社会に対する働きかけも行っていきますが、この核たる思いは深め、受け継いでいきます。皆様のこれまでのご協力に深く感謝すると共に、今後とも応援をどうかよろしくお願いします。

創始者の逝去にあたり

日下部さんのご逝去に際して

特定非営利活動法人コミュネット楽創 理事長 山本 創

 

 昨年末、当法人の基である小規模作業所ホワイトストーンの創設者であった日下部ミヨさんが逝去されました。日下部さんは1998年に地域で暮らす精神障がい当事者が過ごせる居場所として、仲間と共にホワイトストーンを立ち上げられました。当時は札幌に精神障がい者を主な利用対象者としている作業所はまだ数えるほどしかない、社会資源が乏しい時代でした。

 私は日下部さん達に声を掛けられてホワイトストーンの運営委員となったのですが、これには前日譚があります。その2年前、大学を卒業した私は、ご縁があってある小規模作業所の非常勤スタッフになりました。その作業所は独立型の精神科リハビリテーション施設の家族会が運営していました。運営委員、スタッフも障がい当事者のご家族が多く、それをリハビリテーション施設の専門家たちがバックアップするという形で運営されていました。

 そこで常勤スタッフとして働いていたのが日下部さんでした。初出勤の前夜、緊張のあまり寝付けずに大寝坊をしてしまい、初日からいきなり大遅刻をして現れた私を笑いながら迎えつつ、「この人大丈夫かしら」と心配そうな目で見ていた初対面時の日下部さんの表情を、今でも鮮明に覚えています。日下部さんは2名いた常勤スタッフの片方でしたが、作業所の中での役回りはまさに“おかあさん”でした。人情家で皆のことをいつも気にかけ、思いがすぐ表情に出て嘘がつけず、困りつつもいざとなるとハイトーンの声で「何とかするわ」と決断する、そんな飾らない「くさっち」は皆に信頼され、愛されていました。

 彼女が醸す温かさの中でメンバー(当事者)も私自身も安心して過ごしているうちに、やがて作業所の場に少しずつ活気が出てきました。週間ミーティングでメンバーから様々な意見が出るようになり、私たちスタッフはそれに向き合い、受け容れ、活かしたいと思うようになりました。スタッフではあるものの専門家ではない素人の日下部さん達と、専門家未然のひよっこである私がそのように思ったのは、毎日メンバー達と接していく中で、病を患って生きてきたメンバーそれぞれの人生の苦労を知り、またそれぞれのメンバーの人柄そして存在に何とも言えない魅力を感じ、リスペクトの念を覚えたからでした。私たちはメンバーたちの声や思いを、作業所の日々の運営にもっと反映させていこうとし始めました。でもその動きは、我が子たちを変わらぬ日々の中で安全に庇護しようとする家族会や、専門家のコントロール下に置き続けようとするリハビリテーション施設の作業所運営方針との間で軋みを生じ、やがてそれは修復不能なほどに大きくなっていったのです。

結局、日下部さんたちはその作業所を去ることになったのですが、「メンバー達と一緒にやるはずだったことで、まだやり残したことがある」との思いから一念発起し、賛同者を募り、資金を集め、場所を探し、自分たちの手でホワイトストーンを立ち上げました。こうして始まったホワイトストーンでの日々もそれまで同様、いやそれ以上に毎日色々と起きましたが、創業者としてその場を守る立場となってより腹が据わり、“肝っ玉かあさん”的なところも増していたように思います。メンバーもスタッフも、色々とありましたが、いつだって上下つけず、裏表のない、暖かく、お世話やきで、情に厚い在り方で場を守り続けてくださっていました。

 そんな日々の中で日下部さんが少しずつお年を召され、ではいずれ引退される時が来てしまったらこの場はどうなるのだろうかという問題意識が生じ、私たちはNPO法人化して理事会による運営という形態に変化することで、未来につながっていくことを選択しました。日下部さんはその後もしばらくの間、ホワイトストーンで活躍してくださいましたが、やがて私たちにバトンを渡して鮮やかにスッパリと引退されました。

 今回、日下部さんの訃報に接した私は、ホワイトストーン立ち上げ時のご年齢が今の自分よりほんのわずかだけ年上だったとあらためて気づき、精神保健福祉の素人の主婦であり母親であるもう若くはない人が、徒手空拳で一つの事業体を立ち上げたということの、思いの強さや行動のエネルギー、そしてそれを可能たらしめた日下部さんという人の包容力を再確認することとなり、何だか泣きたいような気持ちで尊敬の念を新たにしています。

 障がい当事者の一般企業への就労を支援する私たちの今の活動は、日下部さんが作ろうとしていた暖かな居場所とは、だいぶ違うものになっています。しかし間違いなく受け継いでいることもあります。それは、精神保健福祉の専門家の既存の常識とされてきたものや権力など、様々な“長いもの”に巻かれてしまわない姿勢、変化を恐れずに自分たちで考えて行動していく姿勢、そして何よりも障がい当事者が自分の人生を主体的に生きることに対して、上下つけず率直にとことん付き合おうとする姿勢です。

厳しく世知辛い時代ですが、日下部さんから受け継いだものをいつだって胸に抱きながら、私たちは在り続けます。日下部さん、本当にありがとうございました。

リーダーズメッセージ

2023年度通常総会において理事長から寄せられた言葉には障がい当事者を取り巻く状況への様々な思いが込められていました

そのコミュネット楽創の理事長としての大切なメッセージを元に今の思いをフカボリしてこの場で動画でお伝えしていくこととしました

動画の元となったメッセージはこちらからご覧ください

理事長

理事長

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